複数の管轄にまたがる不動産への(根)抵当権設定登記について
不動産を担保に融資を受ける際、抵当権や根抵当権を設定します。
しかし、対象となる不動産が複数の法務局管轄にまたがって存在する場合、登記の流れがやや複雑になります。
今回は『複数管轄にまたがる抵当権(根抵当権)設定登記』の登記の流れ・注意点についての記事となります。
1.設定証書の作成
まず大前提として、抵当権(根抵当権)設定証書には、担保に供する全ての不動産を記載する必要があります。これは、たとえ不動産が2ヶ所以上の法務局管轄にまたがって存在する場合でも同様です。
2.1ヶ所目の登記申請
最初にどの管轄から登記申請するかを決め、その法務局に対して申請を行います。申請書には設定証書と同様に、全ての不動産を記載する必要があります。ただし、その中に他管轄の物件が含まれる場合は、管轄を明示します。
3.2ヶ所目以降の登記申請
1ヶ所目の登記が完了したら、次に2ヶ所目の法務局に対して登記申請を行います。
設定証書は1か所目の申請の際添付したものを使い回し法務局へ提出します。
ただし、2ヶ所目の法務局では他管轄の不動産について登記の確認ができないため、すでに1ヶ所目で設定済みの(根)抵当権が存在することを証明する必要があります。そのため「前登記証明書」として、1ヶ所目で設定した不動産の登記事項証明書(原本、共担の記載ありのもの)を添付します。同一管轄での追加設定であれば登記事項証明書は添付省略できますが、他管轄の場合は原本の添付が必要の為申請前の用意が必要です。複数の不動産が対象であっても、そのうち1つの不動産の登記事項証明書で足ります。
★申請書の記載上の注意点★
2ヶ所目の申請書には、次のような記載上の注意点があります。
・物件の表示は、設定証書と同様に全ての物件を記載する
・既に1ヶ所目で設定済みの物件については「〇〇法務局管轄」と明記する
・共同担保がある場合は、その旨を明示する
4. 実務上のポイントとまとめ
複数管轄にまたがる(根)抵当権設定登記は、通常の単一管轄の場合に比べて手続きが煩雑です。特に、前登記の証明書類の添付を忘れると補正の対象となり、手続きが遅れてしまうことがあります。
また、2件目の設定については融資実行と同日で登記申請できず、1件目の登記が完了した後、原因日は遡って登記申請となることを金融機関などの抵当権者に事前に伝える必要があります。
今回初めて複数の法務局にまたがる抵当権設定登記を申請しましたが、金融機関や設定者等の依頼者に通常より時間を要することや登記の流れを説明しておいたことで、円滑な手続きにつながりました。
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