不動産売買の立会決済あり?なし?

先日、もうすぐ不動産を売却する予定という方より電話でご相談を受けました。

要点は次の通りです。

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■不動産の売却をするけど、決済のときに立会をしないと言われ不安

■お金をまだもらっていないのに、司法書士に権利証を預けてもよいものか

なんとかして、お金が入ってから司法書士に権利証を渡したい

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この方は別の司法書士事務所にて売買の登記をする予定だったのですが、

騙されているのではないかと不安になり、同じく司法書士事務所であるトラストにご相談されました。

確かに、まだ売買代金をもらっていないのにも関わらず、

不動産所有者である証の大切な権利証を他人に預けるのは抵抗がありますよね。

 

そもそも、立会決済とは?

立会決済とは、不動産売買の決済時に当事者たちが一堂に会することです。

では、簡単に決済当日の流れをご説明します。

 

🔳買主・売主・不動産会社・司法書士・銀行(買主に融資があれば)が集まります

🔳司法書士が買主・売主の本人確認や意思確認などをする

さらに登記に必要な書類の確認する(住民票や権利証などを確認・登記書類へ署名捺印をもらう)

🔳売買代金の決済をする

🔳不動産の引き渡し(鍵の受け渡しなど)

🔳司法書士が登記申請

 

売主からすると、代金がきちんと支払われてから不動産の名義変更がされることで安心です。

また買主からすると、司法書士が売主から権利証などを預かるのを面前で確認することで、

不動産の名義がちゃんと自分に移ることを確信できるので安心します。

 

立会決済では、司法書士が、売買代金が確かに売主に支払われたことを確認し、

不動産の名義を売主から買主へと変更する登記を申請する。

つまり司法書士が決済に立会うことで、取引の安全性が担保されるのです。

 

 

近年増加している立会なしの決済とは?

しかし近年、決済で立会をしないケースがほとんどです。

トラストでは8~9割くらいは立会なしです。

(ちなみに立会するかどうかを決めるのは、司法書士ではありません。

不動産会社から「この件は立会なしです!」と指示があるのです。)

 

いろんな理由がありますが、一番の理由はなんといっても「非効率だから」です。

立会をするとなるとマンパワーがいりますよね。

売主も買主も仕事を休んで決済場所に集まり、終わるまで数時間はかかります。

不動産会社は、同じ日に何件も決済がかぶることもザラにありますから、いちいち立会をしていては人も時間も足りません。

全員が予定を合わせて同じ場所に集まり決済をする、というのは実際にはとても大変なことなのです。

 

では実際の立会なし決済の流れをご案内します。

■事前に売主・買主それぞれとアポをとり司法書士と面談をする

■面談で登記に必要な書類を預かり、本人確認や売買の意思確認を行う

→このタイミングで売主から権利証も預かる

→さらに売買当日、代金が支払われたらトラストに連絡をするよう売主へ依頼

■無事、登記に必要な書類がそろったことを、不動産会社などへ報告

■決済までに不動産の名義変更の登記申請の準備をしておく

■決済当日、売主から「買主から確かに代金が支払われました」という連絡を受けてから登記を申請

■登記を申請したことを不動産会社などへ報告

 

この方法なら、全員で集まり何時間も大変な思いをしなくても、安全に取引を行うことができるのです。

むしろ事前に司法書士が書類を確認することで、万が一権利証などに不備不足があっても

対応できるため名義変更をするには確実性が高くなります。

 

でも冒頭の相談者は「代金が支払われる前に大事な権利証を司法書士に渡すのが心配」とのことでしたよね。

気持ちは分かります。

では逆の立場になってみたらどうでしょうか…?

売主が権利証を司法書士に渡すのを渋っていたら、買主は代金を支払うのをためらっちゃいますよね。

私なら「この売主、お金だけもらっておいてトンズラする気なんじゃないの!?」と不安になります。

 

売主は「権利書を渡しても、お金が支払われなかったらどうしよう」

買主は「大金を支払っても、不動産が自分名義にならなかったらどうしよう」

 

双方にリスクと不安があります。

 

司法書士は、買主・売主のどちらかを有利にするようなことはありません。

(そんなことするメリットがありません)

あくまでも中立な立場で、事実に則って登記をするのが仕事です。

 

だから決済で立会がなかったとしても、安心して司法書士に任せてください。

(依頼者に安心していただけるよう、トラストでは買主・売主の面談が無事完了したら、仲介業者などに必ず報告をしています!)

 

余談ですが、冒頭の相談者は「決済とは立会をするものだと思っていた。

大事な取引だからきちんと顔を合わせて立会をしたかった。」と言っていました。

おそらく仲介業者から立会希望の有無を聞かれなかったのでしょう。

 

立会なしの決済がスタンダードになってきたとはいえ、やはり当事者に意向を聞くべきですね。

 

選択肢があるなら提示してほしいと思うのは当然です。

大事な取引なのに、知らずに話が進んでいると不安になるものです。

 

業界人にとっては毎日繰り返される当たり前のことも、

お客様にはしっかりと丁寧にお伝えしなくてはと思う一件でした。