住宅用家屋証明書による登録免許税の減税措置

今回は住宅用家屋証明書についてです。

 

皆さんは土地や建物を購入する際に、その土地建物の権利と引き換えに、費用を支払うと思います。その費用はなるべく抑えたいですよね?

その費用の中に登録免許税というものがあります。

 

 登録免許税・・・不動産の登記について課税される。

         不動産の移転登記は不動産の固定資産税評価額に一定の税率を乗じる。

 

 

つまり、税率が低いほど登録免許税も低くなるのです。

この免許税を減税する方法に住宅用家屋証明書を取得するというものがあります。

 

住宅用家屋証明書とは

 

住宅用家屋証明書とは、自己の居住用住宅として家屋を新築又は取得した際に、登記においてかかる登録免許税の税率について減税措置を受けるために、登記申請の際に添付する書面のことです。

しかし、どのような家屋でも住宅用家屋証明書を取得できるわけではありません。

取得できる家屋の条件は租税特別措置法72条の2で定められています。

 

 

イ.昭和57年1月1日以降に新築した家屋又は取得した建築後使用したことのない家屋。

 ロ.個人が自己の居住用に供する家屋。

 ハ.家屋の床面積が50㎡以上。

 二.区分建物(マンション)については、耐火建築物、準耐火建築物又はひとかたまりの土地にまとまって建築されており、国土交通大臣の定める基準に適合するもの

 ホ.移転の場合は、建物の取得原因が「売買」又は「競落」

 

以上の要件を満たした場合に住宅用家屋証明書を取得することができます。

 

一般のサラリーマンが精一杯働いてマイホームを買うときの税率と

富裕層が別荘用にビルを購入する時の税率が同じというのは不公平だと思いませんか?

 

その不公平さを少しでも軽減するために住宅用家屋証明書による減税措置はあるのです。

 

家屋証明取得の為の条件のうち、イやロはそもそも登録免許税が少額の為、減税が不要となります。

 

減税措置をとる➡登録免許税が減る➡購入者

 

この循環を作ることを目的に住宅用家屋証明書の制度がとられているのです。

 

家屋証明を適用できた場合はどれほど減税になるでしょうか。

 

登録免許税法第9条によると、売買による所有権の移転登記の登録免許税率は1000分の20と定められています。そのため例えば評価額が500万円の建物の場合、

登録免許税は5,000,000×20/1000=100,000 で10万円となる。

 

では住宅用家屋証明書が適用となる場合はどうなるでしょうか。

 

租税措置法73条によると、住宅用家屋証明書が適用の場合の登録免許税率は3/1000と定められています。このことを反映すると、先ほどと同じ評価額が500万円の建物の登録免許税は5,000,000×3/1000=15,000で、1万5千円となるのです。

 

家屋証明非適用時:10万円

家屋証明適用時 :1万5千円  

こうして実際に数値で見える形にすると、その差に驚きますね。

 

これは家屋証明の大きなメリットと言えると思います。

 

ではなぜ先に述べた要件を満たす際に住宅用家屋証明書適用となり、減税となるのでしょうか。

それはより多くの方に住宅を購入してもらい、経済を活性化させたいという狙いがあるように思います。この考えを補強してくれる根拠として、家屋証明適用条件の緩和があります。

 

先ほど挙げた適用条件のイの築年数の条件ですが、実は令和4年4月1日に改正されたものなのです。この改正によって、中古住宅の流通活性化も図られると思われます。

 

また、個人の居住用という条件については、店舗兼住宅や事務所兼住宅のような場合には住宅部分の床面積が全体の90%より多くを占めている必要があることを定めています。

単純に床面積だけで判断せず、居住用の面積がどれほどなのかの確認をしっかりとする必要があるということですね。

      

私が以前経験した登記の中に、家屋証明が適用になる部分と適用できない部分の両方を同時に移転するという事例がありました。

 

その建物は区分建物(マンション)でありました。そして車庫も移転登記の物件に含まれていました。

一般的には車庫はマンションの1室の付属としている場合が多いですが、今回車庫にはマンションの1室と同等の扱いとして、家屋番号が振られていました。

この場合、マンションの1室と車庫は別の建物として扱います。

 

先にも述べた通り、家屋証明が適用されるのは、居住用の建物に限られます。

今回はマンションの1室が50㎡以上ありましたので、部屋部分は家屋証明適用となります。

一方で車庫は居住用ではありません。そのため、車庫部分は家屋証明が適用外となります。

 

このような場合、登録免許税は家屋証明適用部分非適用部分とで分けて計算します。

 

仮に1室の評価額が300万円、車庫の評価額が60万円だとしたら、

(3,000,000×3/1000)(600,000×20/1000)

1室部分の免許税       車庫部分の免許税

という計算式から免許税を導き出すことができます。

 

このような対応をとる場合、申請書の課税価格欄には、

家屋証明適用部分●●円

家屋証明適用外××円という風に評価額と免許税は家屋証明適用か否かという観点で分けて記載することが必要になりますので、注意が必要です。

 

自宅を購入する際にはぜひ家屋証明という制度を用いて、減税をきかせて負担を軽くしたいですね。

 

ちなみに家屋証明を適用可能な場合と適用できない場合の税率をまとめると以下のようになります。

 

所有権移転 所有権保存 抵当権設定
家屋証明非適用 1000分の20 1000分の4 1000分の4
家屋証明適用 1000分の3 1000分の1.5 1000分の1

 

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