個人所有の公衆用道路(リスクと市への寄付)
先日お客様よりこんな質問をいただきました。
「なんで公衆用道路を自分が持っているんですかね?」と。
そのお客様は注文住宅を建てるためまずは土地を購入し、
その後、新居が完成したため諸々の登記をご依頼いただいておりました。
その方が購入した土地は「宅地」と「公衆用道路」がありました。
「宅地」とは読んで字のごとく、住宅などの建物を建てるための土地のことです。
マイホームを建てるために宅地を購入するのは言うまでもありません。
しかし今回、その方のマイホームの区画は、宅地とともに「公衆用道路」もセットでの販売だったのです。
道路はみんなが使うものですよね。ではなぜその道路を個人が所有するのでしょうか。
基本的に公衆用道路は市が所有しています。
ですが例えば袋小路などでは、そこの家の所有者たちが自分の家の前の公衆用道路を所有することになります。
その道路を通らないと自分の敷地へ行けないわけです。
そのような場合は私道となり、公道とは区別されます。
私道を公道にする・市へ公衆用道路を寄付する手続き
今回ご相談のお客様の場合は、新しい分譲地であらたに造設された私道でした。
私道を公道にする手続き、つまり公衆用道路を新潟市へ寄付することもできますが、
私道が公道認定の条件を満たしていないと寄付申請できません。
新潟市の市道認定基準(一部抜粋)
1:申請する道路の起点と終点が共に公道(国道・県道・市道のいずれか)に接していること
2:道路用地全筆について,市道認定後に市へ無償寄付をすることについて同意をしてもらうこと
3:申請する道路の幅が4m以上であること
4:道路管理上支障となる物件及び状況がないこと (新潟市HPより:市道認定までの手続き)
分譲地で造設された道路が、本来は市への寄付基準を満たしているにも関わらず、
不動産会社が市への寄付申請の手間を省きたいがために、そのまま宅地とセットで販売することもあります。
一般の方がここまで想定して、マイホームの土地選びをするのは難しいです。
信頼できる業者さんを選ぶことが大切ですね。
公衆用道路は非課税・私道所有のリスク
実は公衆用道路は非課税であり、毎年の固定資産税の支払いは発生しません。
では道路を所有していても特にリスクはないのか、というとそうではありません。
私道の所有者は、私道の維持管理の義務があります。
公道とは違い、市が修繕してくれるわけではありません。
劣化やヒビ割れなどがあれば自分たちで修繕しなくてはならないのです。
修繕方法の模索もさることながら、費用がかかることから修繕されないケースも多くあるようです。
また自分が修繕してもその周辺の私道所有者が修繕しなければ、結局道路はガタガタのままです。
周辺住民と協力して、修繕・維持管理をしなくてはなりません。
公衆用道路(私道)の販売漏れ
上記の他に、私道所有のリスクをご紹介します。
それが、公衆用道路の販売漏れ です。
実際に弊社で過去に受けた相談をご紹介します。
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売主:20年前に実家を相続。今は誰も住んでいないので不動産会社を通して売却することになった。
その後買主が決まり、不動産会社が売買契約書などを作成して、司法書士が所有権移転の登記をした。
数年後、売主が亡くなり、その相続手続きで、売却した中古住宅に前面道路(私道)があったことが判明。
前面道路も買い取ってほしいと依頼すべく、売主の相続人が買主に連絡をしたところ、
すでに当時の買主は亡くなっていて、その相続人が所有者となっていたが、
前面道路の買取を拒否されてしまい困っている。
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売主の相続人は、自分が使うはずもない道路をこの先も所有しつづけていかなければならないのでしょうか。
当時の買主・売主ならばまだ話はスムーズだったかもしれませんが、お互いその相続人で初対面、
いきなり道路を買い取ってほしいと言われても「嫌だよ、そんなの知らんがな」と思われても仕方ありません。
では、なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。
主な理由は…「不動産会社・司法書士が調査を怠った」ことです。
売主はあくまでも一般人で、相続や売買の知識が豊富ではなく、
20年前に相続した不動産について熟知していなくても無理はありません。
通常、売買に携わる不動産会社は売主が提示した不動産資料に基づき、
その周辺に所有している不動産(前面道路など)がまだないか、などを調べます。
ただ、例題のケースでは不動産会社がその調査を怠り、売主の言うままに中古住宅だけを買主に販売したのです。
そして担当した司法書士も、不動産会社が作成した売買契約書を信用し、
自分で調査することなく所有権移転の登記をしてしまったのです。
弊社では、公図とよばれる地図を取得し、売却漏れに該当しそうな不動産がないか、重ねて調べます。
ただ、これをするには手間も費用もかかります。(弊社への報酬と、取得する資料の実費で数千円)
様々な理由で、費用のかかる調査をしない司法書士もいます。
(見積金額が高くなり登記依頼がなくなることを恐れていたり、単純に調査が面倒だったり)
目先の費用を考えれば、調査はしなくていいと思うかもしれません。
でもこの数千円で、将来の揉め事を回避できるのです。
弊社は新潟市の他の司法書士事務所よりも、費用面では少し高いと思います。
ですがトラストが携わるからには、お客様にとって最適なご案内をしたいと思っております。
ぜひ費用だけではなく、仕事内容で司法書士を選ぶことをお勧めします。
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